とめはねっ!の桑野さんは漫画界最強の指導者ではないか?

   

こんにちは。国府町怒児と申します。

突然ですが、皆さんは漫画に出てきた教職関係者で誰が一番指導力があると思いますか?
やはりぬ~べ~でしょうか。
確かに身を挺して生徒を守って、クラスの信頼を勝ち得てますよね。
エースをねらえ!の宗方コーチでしょうか。
かなり偏りはあるものの、生徒への情熱のかけ方はすごいですよね。

ただ私は、とめはねっ!という漫画の「桑野さん」という人物を推します。
「誰だよ」って方が大半かと思いますので、順を追って説明します。

とめはねっ!とは

『とめはねっ! 鈴里高校書道部』は、2007年から2015年まで

週刊ヤングサンデー(後にビッグコミックスピリッツへ移籍)で連載された書道漫画です。
書道という題材を丁寧に取材して、書道に取り組む高校生たちの姿を活き活きと、
かつ派手すぎることなく描いた名作です。


『とめはねっ! 鈴里高校書道部』7巻p140 参照

作中で、主人公の所属する鈴里高校書道部の面々は、
コミックス7巻から8巻にかけてオープンキャンパスへ行くんですね。
書道学科のある大学で、進路のことを考えつつ書道を学ぼうというわけです。
そこで、実技指導「かな」のクラスを担当していたのが、前述の桑野さんなんです。

じゃあこの桑野さん、何が一体すごいのか。
まず、登場から非常に上手なんです。

桑野さんの登場


『とめはねっ! 鈴里高校書道部』7巻p166 参照

授業時間前に生徒たちが雑談をしている中、颯爽と教室に入ってきます。
そしてその勢いがいい。
こういうのは、有無を言わさず「授業の始まりですよ」ってことを分からせるのが大事ですからね。
口調のフランクさも実は巧みなんです。
先生を舐めてかかろうとしてる生徒には、「自分の方が立場が上ですよ」と分からせる牽制になりますし、かしこまっている生徒には、権威を感じさせないことで緊張しすぎないようにしています。
この一コマでもかなり場数を踏んでいることが分かります。


『とめはねっ! 鈴里高校書道部』7巻p166 参照

そして流れるような名乗り。
簡潔さがいい。
自分が一方的に話すのではなくて、なるべく実技と指導に時間を割きたいという意思が伝わってきます。
ここの「よろしく」もフランクな口調を上手に使ってますね。

桑野さんの一時限目


『とめはねっ! 鈴里高校書道部』7巻p172 参照

早速、かなの教材を配って実技指導に入るわけですが、ここでも指導力が光ります。

まず、指導が具体的。
生徒の作品でもっと良くしたいところがあれば、具体的に示します。
今回は、赤字で中心線を書くことで文字が右に流れている点を視覚化しています。
「わかるでしょう?」という塩梅も絶妙です。「わかるよね?」だと押し付け感が強くなりますし、「わかります」だと生徒に自分の頭で考えてもらえないですもんね。


『とめはねっ! 鈴里高校書道部』7巻p173 参照

さらに、褒めるときは盛大に。
学校に限らず、会社でのマネジメントでも「叱るときは個別に、褒めるときは皆の前で」なんて言いますよね。
これ、分かってはいても中々できないんですよ。
褒められた生徒としては、そのときは恥ずかしいかもしれないけど、絶対嬉しいですもんね。
拍手をさせることで、他の生徒にも「どんな作品なんだろ」と見せる時間を作ってるのもすごい。
さらっとやっているようで高い技量を感じます。

桑野さんの一時限目の終わり


『とめはねっ! 鈴里高校書道部』7巻p176 参照


『とめはねっ! 鈴里高校書道部』7巻p176 参照

で、ここ!
ここを私は一番見て欲しいです。
一時限目が終わったところで全体の構成を話してるんです。
何を言ってるか分かりますか?
普通、全体の予定を話すとしたら一時限目の頭に話そうかなって素人は考えると思うんです。
気の利かない人なら、一日目が終わった段階で次の日の予定を話すかもしれません。
でも、桑野さんは一時限目の終わりなんです。
一時限目をやってみて、大体授業のイメージができたところで全体のことを話すんです。
これが抜群に上手い。
確かにこうすれば、「ああ、こんな感じで後3時限やるんだな」って明確に分かりますもんね。
1時限分手を動かしてることで、緊張も適度にほぐれた状態で話が聞けます。
しかも、最後に「創作」の時間があることを告知することで、ここからの実技が逆算思考になるんです。
つまり、「創作の時間までにこれくらいの完成度にしたいから、これくらい練習をしておこう」となるわけです。
創作の時間の告知をしなかったら、ただ何となく実技の時間を過ごしてしまうかもしれませんからね。
いやあ、参った。あんたすごいよ。

桑野さんの解説


『とめはねっ! 鈴里高校書道部』7巻p187 参照


『とめはねっ! 鈴里高校書道部』7巻p187 参照

古典の資料を実際に呈示して解説する場面にも、桑野さんの指導力を見ることができます。
俗っぽい質問にも平気で答えるんですよね。
教職の方ってそういうの躊躇しそうな印象があったのですが、
桑野さんは堂々と説明することで、生徒の関心を引き出すことに成功しています。
資料の実物を見せることで、「大学に来れば本物に触れられるよ」と口には出さないけどアピールしている点も魅力的です。

創作の時間


『とめはねっ! 鈴里高校書道部』8巻p15 参照

実技の時間が終わって創作の時間に入るのですが、この言葉が本当にありがたい。
生徒が萎縮しないように最大限気を遣っているのが分かります。
確かに、他の生徒が座って黙々と書に打ち込んでる中、先生の机まで歩いていって話すのはちょっと恥ずかしいですからね。
持ち込みのハードルを下げる配慮で溢れています。
ここまでの授業で関係は築けてるから自然と質問に来るだろうなんて甘えずに、説明を厭わない姿勢にも痺れますね。

桑野さんの一時退室


『とめはねっ! 鈴里高校書道部』8巻p26 参照

生徒からの創作物を集めて寸評のために審査するシーンです。
この小さい一コマにも生徒の欲しい情報が全部入ってます。
①教室を出てどこへ行くのか
②何分くらい席を外すのか
③その間どうしていればいいのか
まとめれば簡単ですが、実践するとなると意外と難しいんですよ。
特に、②は「ちょっと審査してきます」みたいに具体的な数字を出さない人が結構いるんじゃないですかね。
「ちょっとってどのくらいだよ」って生徒は思うはずですからね。
③も見落とされがちで、単に「待ってて下さい」とかだと席を立っていいのか分からなくて意外と困ります。
その点、桑野さんは流石という他ないです。

桑野さんのメッセージ


『とめはねっ! 鈴里高校書道部』8巻p55 参照

全ての書道講座が終わると、桑野さんが最後のメッセージを送ってくれます。
最後の「だろうか?」がいいですよね。
今までのフランクな口調と同じように見えますが、「共に書道を志す同志」のような目線で話しかけてるように私は見えます。
元々、高校生だからと子供扱いしすぎないスタンスの桑野さんですが、ここは完全に対等な立場になってます。
だからこそ上から押し付ける言葉よりもスッと生徒に刺さります。
いやあ、この人に習ってみたい。
書道なんて全くしたことないのに、そう思わせてくれるほど素晴らしい講座でした。

刺激受けちゃったな。
ちょっと試しに一枚書いて三浦清風先生に持ってこう。

 


『とめはねっ! 鈴里高校書道部』1巻p210 参照

めちゃめちゃ言われました。

参考資料

◆『GITAG | フリー画像・写真素材集3.0』http://free-images.gatag.net/(最終確認2017/4/26)
◆『とめはねっ! 鈴里高校書道部 第1巻』 河合 克敏 2007 小学館
◆『とめはねっ! 鈴里高校書道部 第7巻』 河合 克敏 2010 小学館
◆『とめはねっ! 鈴里高校書道部 第8巻』 河合 克敏 2011 小学館

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