なぜ三田紀房の漫画は足が長いのか

   

こんにちは。国府町怒児(こうまちぬんじ)と申します。
今日は、「なぜ三田紀房の漫画は足が長いのか」というテーマを考えていこうかと思います。

 

三田紀房とは

まず、三田紀房とはどういう人なのかということからお話します。
三田紀房は、日本の漫画家です。
代表作に東大受験をテーマにした『ドラゴン桜」があり、ドラマ化もされています。主人公たちが戦略を駆使して格上の相手と戦っていく展開が魅力的です。私も三田紀房作品はよく読んでいたのですが、一点気になる点が出てきました。

 


『エンゼルバンク』1巻キャリア1参照

桜木さんの足長くないか?

いやいや。これは偶然だ。腕の悪いアシスタントが入ったか何かで、プロポーションが崩れたんだ。
そう思って同じような形のコマを掻き集めてみました。

 


『エンゼルバンク』12巻キャリア103参照

うん、長いな。

 


『ドラゴン桜』2巻17限目参照

長い。

 


『ドラゴン桜』19巻172限目参照

比較的まともだけど長い。
足が気になってフリースローどころではない。

と、いうことは桜木さんは極端に足の長い人なのだろうか。
さらに調査を進めていきました。

 


『エンゼルバンク』4巻キャリア30参照

な、長い。


『エンゼルバンク』4巻キャリア29参照

縦ゴマは総じて足が長いみたいです。

 

何か意図があるのではないか

ではこの現象、ただ画力の問題で起きているのでしょうか。
何か意図があるのではないでしょうか。
私は三田紀房漫画に感化されているので、「表面だけなぞって思考停止してはいけない」「物事の裏にある真実を突き止めろ」という気分になっていました。そこで、三田紀房漫画全体に流れるテーマを整理してみることにしました。

 

作品テーマから工夫を読み取る

三田紀房漫画のテーマとは、


『エンゼルバンク』6巻キャリア47参照

①常識を疑え


『エンゼルバンク』4巻キャリア33参照

②自分の頭で考えろ


『インベスターZ』5巻credit37参照

③戦略的に取捨選択しろ

だと思っています。
そしておそらく、三田紀房自身もこの考えに則り漫画を書いています。
日本の漫画家全体の中で画力の高いとはいえない三田紀房がヒット作を連発するには、他の作品にはない工夫をする必要があるからです。
では、その工夫とは何なのでしょう。
私は足の長いコマを集めているときにあることに気が付きました。

ノンブル全然ねえな。

普段私は、記事で引用した漫画に巻数とページ数を記載しています。でも、三田漫画はコミックスを読み進めてもページ数が全然載っていないんです。
なぜページ数が全然載っていないのか。

それは、裁ち落としが極端に多いからです。

 

裁ち落としとは

漫画で言う裁ち落としとは、コマの端っこを原稿からはみ出すように配置する技法です。裁ち切りとも言います。
普通の漫画は、上の図のようにコマが原稿の中に収まっています。
一方で裁ち落としを使った場合は、コマの端が切り落とされて製版されます。

そして、現在何ページであるかを示す数字は、コミックスの右下か左下の余白にあります。
裁ち落としを使用している場合は余白がないため、ノンブルが付かないというわけです。
桜木さんを追いかけて読んだドラゴン桜とエンゼルバンクは、コマの上段と下段がほぼ裁ち落としでした。
この方法を使うとどのようなことが起きるのでしょうか。

 

裁ち落としのメリットデメリット

まず、裁ち落としのメリットとして、迫力が出るということが挙げられます。全部が全部、原稿の中にコマが収まっていると画面が大人しい印象になります。
そこで裁ち落としを使うことで、画面がダイナミックに使えるようになり、原稿に動きが出てきます。
反面、デメリットは多用しすぎると画面が暑苦しくなることです。
裁ち落としのコマは主張が強いです。
なので通常は、ここぞというコマに裁ち落としを使って画面にメリハリをつけます。
しかし、三田漫画はデメリット覚悟で裁ち落としを多用します。
それは何故なのでしょうか。

 

三田紀房の思考をトレースしてみる

私は、三田紀房なりの戦略があると思っています。
ここからは私が三田紀房になったつもりで思考をトレースしてみます。
テーマに絡めて言えば、まず私だったら
②自分の頭で考えろ
を適用して、自分が勝ち残る方法を考えます。
自分の漫画を客観的に見てみます。
うん、女の絵がかわいく描けないぞ。
男もイケメンが描けないぞ。
となると、自分の戦略も決まってきます。

③戦略的に取捨選択しろ
を実行します。
掲載誌はモーニング。男性向けの青年誌です。
ならば、どうせイケメンも描けないし女性客はターゲットから外そう。
男性誌だから、多少暑苦しくてもいいだろう。
ガツンと来るような迫力が欲しい。
迫力を出すためにはどうすればいいだろう。

ここまで考えて、
①常識を疑え
が出てきます。
裁ち落としを使えば迫力が出るぞ。
でもこれ、1ページ全部裁ち落としにしてる人いないよな。
なんでだろ。
確かに暑苦しくはなるけど、大した理由はないんじゃないか。
その方が自分の漫画に合ってるならやってしまおう。

以上のように私なら考えます。
まとめると三田の戦略は、
「綺麗さを捨てて迫力を取る」という作戦になります。

 

綺麗さを捨てて迫力を取るとどうなるのか

この戦略に当てはめると、不自然な足の長さにも合点がいきます。
迫力を出すためには、人を大きく描いた方がいいからです。
縦コマで人をなるべく大きく描くには、
通常のプロポーションよりも人物を縦長に描く必要があったのです。
そして、顔や胴体が長くなってしまうと目立つので、
より目立たない足を長くするという方法に辿り着いた、というわけです。

一見不自然な漫画の描き方でも、考えてみると工夫があるんですね。
いやあ勉強になった。

 


『ドラゴン桜』15巻138限目

と、思ったら横のコマでも普通に足長いですね。
やっぱ単に立ち絵が苦手なだけかもしれません。

 

参考資料

FIXABAY(表紙画像)http://www.fixabay.com/(最終確認2017/03/25)

『ドラゴン桜』2巻 三田紀房 2004 講談社

『ドラゴン桜』15巻 三田紀房 2006 講談社

『ドラゴン桜』19巻 三田紀房 2007 講談社

『エンゼルバンク』1巻 三田紀房 2008 講談社

『エンゼルバンク』4巻 三田紀房 2008 講談社

『エンゼルバンク』6巻 三田紀房 2009 講談社

『エンゼルバンク』12巻 三田紀房 2010 講談社

 

 

『インベスターZ』5巻 三田紀房 2014 講談社

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